岡崎ゆみの『ピアニスト備忘録』

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 「元気が出るピアノ演奏」

 親しくさせて頂いている著名な音楽プロデューサーM氏の奥様が昨年の9月2日に脳梗塞を発症され一命を取り留められました。まだ脳疾患を発症するような年齢ではなく私よりお若いと聞いておりました。幸いに認知障害がなく、M氏にささえられて半年間の辛いリハビリに耐えられて本日退院されることになりました。
 奥様がベッドで動けない状態から6か月、杖をついて歩けるようになるまで、二人三脚で努力をされている様子を時々メールで知らせてくれていました。
 その中で、私にとって涙が出るくらい嬉しいコメントを頂きましたのでご紹介させて下さい。奥様はまだ小さなボールも握ることが出来ずに手から滑り落ちてしまい、その訓練を何時間もなさっていた頃に下さったメールです。


 妻は未だ入院中ですが、順調に回復しています。
ある意味、入院を契機に彼女は一気に岡崎さんのファンになった人間です。
彼女はほとんど毎日岡崎さんの演奏を病院のベッドの上で聞いています(私も、彼女と一緒に iPodからヘッドホンを二股で出して聞いたりしています)。
彼女ほど岡崎さんの演奏のヘビーリスナーもいないのではないでしょうか(笑)。
特にお気に入りなのがリストの『Consolation』です。
今日も二人で「ピアノの音がすごく良いネ。いまどき、こんなに自然なピアノの音を出す人はいないネ』などと言いながら聞いていました。


 そしてこの曲を聴いているときに奇跡が起こりました。「何日も何度やっても出来なかった小さな細長い木片を指の間で回すことが岡崎さんの演奏を聴きながら突然出来た!」と話してくれました。

 正直にいいますと、私は音楽雑誌などを見るたびに「こんなにたくさんピアニストが演奏会を行っているのに、私がする必要がどのくらいあるのか?」と疑問を持ってしまうことが度々ありました。 リサイタルにいらした多くのお客様が「ゆみちゃんのピアノを聴くとすごく元気が出る」「いい気持になる」「疲れが取れる」と仰って下さるのを「お世辞」だと思っていました。しかし今回のことでM氏や奥様が仰って下さるような力が私の演奏に少しでもあると信じてみようかと思いました。ご夫妻に私がピアノを弾く意味を見出して頂きました。
 まだ具体的にどうしたらよいのかわかりませんが、「元気が出るピアノ」を生かせるようなコンサートを行っていきたいです。

 K子さん、退院おめでとうございます。そして、私のピアノ演奏への気持ちを良い方向に導いて下さりありがとうございました。 
by yumi-okazaki | 2012-03-31 12:08 | 備忘録